火の鳥:全13巻

著:手塚治虫のコミックです。漫画家人生の最初から最後まで手がけられた、手塚治虫のライフワークと言われている作品ですね。残念ながら未完ではありますが、それでも相当なボリュームです。
私が読んだのは角川文庫でまとめているもので、基本的には1つのエピソードを1巻にまとめています。但し、中でもボリュームが大きい「乱世編」「太陽編」はそれぞれ2巻と3巻になっています。どのようなエピソードがあるか詳細はここに書きませんので、興味のある方は調べてみてください。
さて、私はこの「火の鳥」を読むのは初めてなのですが、ざっと眺めてみると予備知識が少しあるのは「鳳凰編」「宇宙編」の2つです。
鳳凰編はファミコンでプレーしたんですよね。それで主人公が我王というのも知ってはいたのですが、原作とゲームは全くの別物だということがわかりました。
ゲームの方だと我王は既に仏師になっていて、火の鳥の彫刻を彫ったが盗まれたので、それを取り返す冒険という感じです。
原作は、我王と同じく仏師の「茜丸」が都で鬼瓦を彫る対決をするのがハイライトでしょうか。もちろん、お話としては我王の生い立ちから、どのようにして彫刻に目覚めたのか、そして我王が対決の後にどうなったかも描かれています。
この我王は、「火の鳥」という作品を通じて何度も輪廻転生する「猿田」という人間のうちの一人なのです。猿田一族は鼻が大きいのが特徴。しかし性格は皆それぞれです。立場や、鼻が大きい理由も違っています。
猿田に限らず、多くの登場人物は輪廻転生したり、他のシナリオに登場してつながりを持ちます。そのため、順に読んでいくと話が一つにつながって、世界が開ける瞬間があります。この辺が元々の構想だったようですね。
話が逸れまくってしまいましたが、もう一つ予備知識があった方の宇宙編についても少し。これは確か、アニメで放映されていたのか、その映画版をテレビで観たのか…良く思い出せません。
火の鳥の呪いにより、年老いたり幼くなったりを繰り返して長い時間を生きる牧村、とある惑星に不時着した猿田とナナなど、ロケット内の人物たちによる愛憎が見ものです。植物が動き、動物は地に生える不思議な惑星で、赤ん坊になった牧村をどうするか…というところから、物悲しい結末を迎えることになります。
この話に限らず、未来のお話は大抵人類の愚かさや、生命のグロテスクさを現していると思います。このままでは未来が危ないという、手塚治虫なりの警鐘だったのかもしれませんね。
ということで、一編を読むだけでも読み応えがありますが、既に単行本になっている分を読んだらしばらくかかってしまいました。この上、構想だけだったシナリオも幾つかあったとは。
もし手塚治虫が100歳まで生きていたら、火の鳥はどういう結末を迎えていたのでしょう。そうしたことを想像するだけでも、なかなか楽しめると思います。