キャバママ:全11巻

原作:城戸口静、作画:山田圭子のコミックです。Kissで連載されていました。
あらすじは、シングルマザーでキャバクラに務める24歳「朝比奈向日葵」と、その息子で小学2年生の「朝比奈大地」を中心として、周囲の人たちとの交流を描いていく作品です。
向日葵の夫「慎吾」はかつて暴走族のリーダーだったのですが、大地が物心つく前に亡くなっています。しかし向日葵は、そんな苦境や暗い生い立ちを振り払うように、周囲に笑顔を振りまいています。
そして大地は元気に育ち、母親を「ヒマ」と呼ぶ生意気盛り。時代劇が大好きで、刀の玩具を手放しません。一番のお気に入りは鬼平という、渋すぎる小学生です。
朝比奈親子が引っ越してきた団地では、他の主婦たちに最初は疎まれます。昼夜が逆転した生活や全体的にルーズな様子、更に仕事が仕事だけに、夫を取られたと勘違いされたりと。しかし、最終的には向日葵の人柄も手伝って誤解は解けていきます。
向日葵の周囲には二人の男性が重要人物として存在します。一人は慎吾の舎弟の一人「豪」。務める店のナンバーワンホストであり、向日葵と大地を守り続けると誓った義理堅い人物です。愛する人のために本気になっていく様子は熱いですね。
もう一人は、朝比奈親子が団地に引っ越して来た時のお隣さん「石田」。医者として多忙な日々を送る彼には「綾香」という娘がおり、男手一つで育ててきました。向日葵への共感から好意になっていく経緯が見ものです。
向日葵が仕事をしているシーンのカッコ良さに引き込まれます。笑顔を忘れず、しかしそれ以上にプロとしてのプライドを忘れない立ち居振る舞い。日頃がルーズに見えるだけに、その線引きは絶妙です。
あとは、豪と石田先生の間に揺れる向日葵には、最後までハラハラさせられます。二人ともかけがえのない人だと明言していることもあり、複雑な感情だと思いますね。この言葉は、本当に大切なもののために一生懸命になれる向日葵だからこそ、光る台詞なのかもしれません。
城戸口静は「お水の花道」の原作者でもあるそうなのですが、こちらも名前だけ知っていて読んでいない作品なんですよね。やはり本作のような方向性なのか、少し気になるところではあります。