博士の愛した数式

著:小川洋子の小説です。第一回本屋大賞を受賞した作品だそうです。
あらすじとしては、家政婦をしている「私」が、交通事故により記憶が80分しか持たなくなった元数学者「博士」と出会い、「私」の息子「ルート」と3人での交流を描いた作品です。
博士は記憶が80分しか持たないため、私が家政婦の仕事に来ると常に忘れています。ある程度はスーツに付箋を貼ってカバーしているのですが、毎回出会うたびに同じような質問をするのが微笑ましくもあり。
また博士は異常なまでの数学マニアで、私に初めて会った時も「キミの靴のサイズは24か。4の階乗だな」などと、どんな数字でも数学に結び付けてしまいます。特に整数が好きらしい印象でした。
偏屈で、数学以外には殆ど興味を示さない博士ですが、無類の阪神タイガース好き。しかし博士の記憶が止まる前の情報しか持っていないので、江夏豊が今日も活躍すると信じているのです。
私には10歳の息子がおり、博士が初対面の時に「ルート」と呼ぶことにしました。頭が平で、ルート記号のようだと思ったからです。
博士はルートを溺愛し、出会いのたびに忘れてはいるものの、付箋を見て状況を理解し、あらゆる形でルートに愛情を注ぐのです。この心のふれあいこそが、本作のもっとも大きなテーマとなっています。
因みに、タイトルになっている「博士の愛した数式」とはオイラーの公式(等式)のことで、博士はそれが書かれた付箋をもっとも大事にしています。博士の姉と私が口論になった時も、スッとその紙を差し出していました。
また、映画の方も観たのですが、そちらは大人になって数学教師になったルートが、生徒に向かって回顧する視点で物語を進めています。小説は私の視点なので、違いがあって興味深いですね。
数学が嫌いな人にも、読んでもらいたい作品だと思います。むしろ嫌いな人の方が、整数の持つ魅力に惹かれやすいかもしれませんね。