下弦の月:全3巻

著:矢沢あいのコミックです。りぼんで連載していました。
短い発端部分とその後の本編で構成されており、本編は推理的な部分も出てくるのですが、発端での人物の行動が大きく関係しています。
本編は、交通事故にあって入院していた小学生の少女「白石蛍」が、自分の飼い猫を鍵にして空き屋敷に住む清楚な女性「イヴ」に出会ったことから始まります。イブは恋人の「アダム」に会いたいのですが記憶がなく、それを蛍と仲間たちが引き合わせようと奔走することになります。
アダムは発端部分で登場する金髪碧眼のギタリストで、彼と高校生の少女「望月美月」の出会いが描かれています。巻を追っていくごとに、アダムの経歴が明らかになり、そこからイヴの本来の姿も浮かび上がってきます。
イヴはアダムに会いたいという一念でそこに存在している一途な女性で、蛍はどうしてもイヴの思いを叶えてあげたいという優しい心の持ち主です。しかし、二人が純粋な心を持つが故に、真実に近づくたび涙にくれて、何度も絶望しそうになります。
私個人的には、最後の寂しげな結末も、ハッピーエンドと言えるのではないかと思っています。
矢沢作品にしては解釈が難しいと感じたのは、私が「天使なんかじゃない」「ご近所物語」しか読んでいないからでしょうね。「NANA」はアニメで少し観て、駆け引きのあるアダルティな作品だったと思っているので。
あと、アダムのモデルになったアーティストがいるとしたら知りたいですね。作品から得られる情報だと、ブリット・ポップのバンドのようなのですが…。個人的イメージはKULA SHAKERですが、クリスピアン・ミルズはまだ活動してますしねぇ。