冒険の国

著:桐生夏生の小説です。先日、図書館に行く機会があり、借りて読みました。
あらすじとしては、学生時代に仲良く暮らした永井姉妹と森口兄弟のうち弟の英二が自殺し、それからしばらく離れていたものの、ある日に妹の美浜と兄の恵一が再会して、昔や今を見つめていくお話です。
主人公は美浜で、彼女は姉と両親と一緒に暮らしています。ディズニーランドが建設されて、町は急速に変化していく…。しかし自分たち家族は周囲に取り残されるように、変化についていけていない。そんなもやもや感が伝わってきます。
それにしても、タイトルの「冒険の国」とは何なのか。私は読み始める前に、単純に「ディズニーランドのことかな」と思ったのですが、読み進めていくと、美浜があまり変化を求めない性格に見えてきて…。すると、同棲生活にけりをつけて家に戻った、つまり自分の家が「冒険の国」だったのかもしれない、とも思ったりしました。
英二の自殺について美浜が何度も振り返りますが、英二は美浜に何を残していったのか。美浜は何をいつまでも引きずっているのか。そういった部分も考えてみると面白いかもしれません。
割と似たような空気で淡々と進んでいくこともあり、読み口はシンプルだと思います。しかし、それだけに読者に投げかける部分も多く、「読ませる」というより「考えさせる」内容だと思いました。