ニタイとキナナ:全1巻

著:高室弓生のコミックです。comicトムプラスに連載されていた作品です。
内容は、縄文時代のデランヌ*1に暮らす青年「ニタイ」と妻の「キナナ」を中心とした、村の人々の生活を描いています。
生活を淡々と描いていくだけの作品にも関わらず、縄文時代という古代をテーマにしているだけあって、味わい深い作品になっていると思います。
山に入って山菜を採ったり、川で船や罠を使って漁をしたり。大変ではあったでしょうけれど、楽しそうな時代でもあったように描かれています。巻末の考証でも、戦があった弥生時代と違い、縄文時代はあまり人同士の争いはなかったのではないか? と述べられています。
個人的には、罠漁に憧れてニタイに弟子入りする少女「チリ」が結構好みでした。一途で我が強く、芯があるのが特に。
また、高室さんは幼い頃から遺跡や縄文文化に慣れ親しんできたそうで、時代背景などについても良く調べられています。はっきりと「これは正しい、間違っている」という判定がしづらい部分ではありますが、作中の人々の動きも理にかなったものだと思いますし。
ワイド版でかなり大きい本ですが、読み応えのあるコミックだと思います。大人に限らず、縄文文化の参考として読むのも良さそうだと思いました。

*1:現在の岩手県辺り。