しゃばけ

著:畠中恵の小説です。江戸時代を舞台にした推理物というか妖怪物というか、そんな内容で、本作はシリーズ1作目です。2001年に第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した作品だそうです。
お話は、大店である廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の若だんな「一太郎」が夜道で偶然人殺しを見かけたことから始まります。その後、町では薬問屋の関係者が次々と襲われる事件が勃発。
犯人は全く共通点がない人物がバラバラに事件を起こしているのですが、若だんなは、これは誰かの意思で行われていると考え、やがてそれを実行していきます。
若だんなの傍には「佐助」と「仁吉」という二人の手代がいつもついているのですが、実は彼らは妖怪。しかも付近に住む妖怪の中でもひときわ強い力を持っているので、人間以上の力を発揮することもしばしば。二人の正体は、店の者たちには伏せられています。
若だんなは身体が弱いのですが、手代をはじめ様々な人の力を借りて、事の真相を解明していきます。そして最終的には、自らがどうすれば良いかを模索し、自分の力で行動するのです。
この作品では、手代の二人を含めた妖怪が重要になってきます。
また、この妖怪の描写がひと癖もふた癖もあって面白いです。中でも「鳴家(やなり)」が大勢で登場して、若だんなに話を聞かせる場面は何度も出てきますが、特に気に入りました。小さくて気の弱い彼らが若だんなの膝に群がり、時々ころんと転げるのもいる。そんな様子が、目に浮かぶようです。
推理物としての側面も忘れてはいけません。若だんなが町内で起きている事件を聞き、最初は点だった事件が線になり、やがてそれが自分に巡り巡ってくる…といった高揚感は見逃せません。
シリーズ物ということで、次からの作品にも興味が出るところではあります。読みやすくて興味深い作品だと思いました。