藤子・F・不二雄 異色短編集:全3巻

これはタイトルが本作の概要を表しているので、あらすじ的な部分は省略します。気になるのは「異色」という辺りですが、作品として後味の悪いものが多いんですね。
最も気になった作品としては、第1集の表題作「ミノタウロスの皿」があります。
お話は、地球から旅立ったロケットが乗務員1人を残して全滅、救援も間に合わない状況で地球型惑星に不時着します。ここで倒れているところを「ミノア」という美女に保護され、暫くは食事や寝床の世話をしてもらうのです。
しかし会話をしていると、ミノアも周囲の人々も知能程度は低く、宇宙という概念を理解できなかったり、食事も良く見ると木の実や葉っぱがそのまま出ている原始的な生活をしていることに気づきます。
そんなある日、怪我をしたミノアの元に来た医者が牛の姿をしていることに驚き、そこで起こした騒ぎが発端で彼はこの惑星の真の姿を知ります。それは、牛が特権階級であり人が家畜という事実。
このことや、近日中に行われる祭りについて知り、彼は混乱の渦に取り込まれてしまいます。
この作品に限らず、基本的には恐怖を感じさせる結末の作品が殆どなのですが、この歳になって読んでみると非常に奥深く、興味が出ました。生命とは何か、世界の成り立ちとは何か、といった重いテーマが多く、つい読み直してしまうこともしばしば。前述の「ミノタウロスの皿」も数回読みました。
よくよく思い出せば、「ドラえもん」だってそうした教訓をちょっとダークな感じで伝える話もあったような気が…。のび太が単に失敗して「こいつアホだなー」だけに留まらない怖さがあったり、ですね。
読み応えのある作品が多く粒揃いなので、作品に没頭できる環境ならば是非。あまり寝る前に読むのはお勧めしませんが。