MW(ムウ):全2巻

著:手塚治虫のコミックです。ビッグコミックで連載されていました。映画化もされたんですね。
内容としては、歌舞伎の家に生まれたエリート銀行員「結城美知夫(ゆうきみちお)」と、その旧知の仲である神父「賀来巌(がらいいわお)」の二人を軸にして、タイトルにもある「MW」との過去のつながりを描いていく作品です。
結城は美形で仕事もできるという表の顔を持ちますが、裏では誘拐や殺人を何とも思わず行うという冷酷な顔も持っています。そして悪事を働いた後に賀来のいる教会を訪れて懺悔する日々。
賀来は神父と言う立場もあり、結城に法の裁きを取るという手段を選べず、ここまで来てしまいました。また、結城は過去の出来事から賀来の身体を求め、それが賀来の罪の意識をますます大きくさせます。
タイトルにもある「MW」とは彼らが少年の頃にいた島の人間を全滅させた毒ガスのことで、二人はたまたま命だけは助かったのですが、結城はこのガスの影響で頭がおかしくなってしまったのです。
結城は現在の地位を使い、また人々を巧くコントロールすることで、MWに近づいていきます。彼は賀来にだけ「MWを手に入れたい」と打ち明け、わざと賀来に人殺しをさせるように仕向けて、一蓮托生にしてしまいます。
それにしても結城の手口や進め方が見事なもので、死人を使ってまで計画を遂行させていくんですよね。その執念の背景には、自分がMWにより命が短いと悟ったことがあるようです。どうせ死ぬなら世界を巻き添えにしてやると。
MWと共に破滅の道を歩んだ結城、その恐ろしい結末も含めて見所が多い作品だと思います。